家の隣、大きな寺の境内に俺たちは居た。深夜2時くらいだったと思う。自販機でコーヒーを買い、門の柱に寄りかかるようにして座った。俺たち以外に誰もいない。
俺たちは色んな話をした。俗と反俗について。川端康成について。自分の犯した過ちを吐露したりもした。6月だというのに異常なほど寒く、俺は小さく震えていたと思う。
彼が言う。真の反俗者は俗に憧れているはず。俗を忌み嫌う人と反俗者は対極に位置する、と。俺はなるほど確かにと、感心した。思い当たる節がある。俺は自分を反俗的だとは思うが反俗者だとは思えない。俗っぽく出会いと別れを繰り返したし、俗っぽく臆病にもなる。
この国が敗北を認めることから始めたように、俺も自らの内に在る絶念を素直に受け入れることにしたんだ。敗北の認知。相手は誰だ?紛れもない自分さ。
seiryuがルーリードの言葉を教えてくれた
''お前の一日は俺の一週間だ''
助手席から俺はハイタッチしたい気持ちだった。