low days

Kyoto Japan No Fun / PIANOGIRL vo. diary

無題

爪の間に塗料が残ってる。鮮やかだった青や赤が全部混ざって名前の無い色になり指を染めるんだ。新しいバンドシャツを作っていた。長袖を二種類。一つは俺が好む熟語を仰々しく並べたデザインのもの。もう一つは艦船の図面をオモテ面いっぱいに配置し、その周りを囲むようにとある日本人の言葉を載せた。戦艦大和乗組員最期の言葉として有名なやつだ。制作を俺とBa.豪でやったのが、10日の水曜日。昼過ぎに集合して、一日中やったね。小雨の中、ホームセンターで木を買ってスクリーンの木枠を作る所から始めた。プリント作業に入ってからはとにかく神経を集中させていたから俺も豪も酷く疲れた。繊細で注意深い作業。ピアノガールの中では俺たち二人が向いてる気がする。NJとファイターは豪快な男達だ。繊細な作業は苦手と見える。人には向き不向きがあるからね。豪が終電で大阪へ帰ってからは俺一人で作業の続きをした。バンドのTシャツやパッチ、そのどれもに俺は強い意志を反映させたい。それを失くしては、何を作る必要があるだろうか。ましてや表現とは。俺がモチーフを紅葉にこだわるのはやはりヒロシマという街を故郷に持ったからで、今の俺には遠い街だが間違いなく俺の街だ。今は大河を流れる身だが、常に彼岸にあの街を見ている気がする。夜になれば真っ赤な煙を吐き出す街で、汚い川と、乱暴な運転と。

18日、昼間に居る。昨夜電話があった。素性は伏せるが、創造的で情熱に駆られる男。男と俺にはよく知る共通の友人がいた。というより、男と友人の間に俺が後から入っていったと言う方が正しい。男はその友人と''情熱''について行き違いを見つけてしまい激昂、幻滅、してしまったと言った。電話口で男の鼻息は荒かった。詳しく話す必要があるから今度また会って話そうという結論に。俺は多くを知らぬうちは何も語らないようにしている。俺たちは難しい。たった一言の言い間違いで何もかもが崩れ落ちてしまう。そんな危険も顧みずに分かったような風に話す奴を俺は沢山見てきた。それは会話じゃない。さて、電話で聞いた顛末ではやはり俺からすれば両方の言い分に頷くことが出来るんだ。二人が勝ち負けを決めたいのならば俺はこんな卑怯な立ち位置を取らないと思う。俺が味方する方をはっきり表明しただろう。しかし、勝ち負けじゃないんだ、俺たちは。友達だもの。だから難しい。情熱、そこから生まれるものは評価されるべきか?簡単に言えばこんな内容だった。そう、もっと複雑で説明不可能な気持ちが絡まっていると思う。どうしようも無いからぶつかる。隔たりは無くならないかもしれない。もうガキみたいに一喜一憂しないよ。俺たちは成長しなくちゃならん。外に出て、川に架かった橋の上で俺は電話をしていた。寒くて震えるようだったが、煙草に火をつけると暖かい感じがした。また会って話そう。そう言って俺は電話を切った。友達の為なら何でもやってやろう、という気持ちで俺はいる。