low days

Kyoto Japan No Fun / PIANOGIRL vo. diary

夜港

可笑しなことに、鳥の鳴き声を聞くのは明け方が多い気がする。昼間も鳴いてるはずなのにね。全ての細胞が疲れ果てた朝、聴覚だけが研ぎ澄まされているのか。10月20日朝6時半、書き始めた。さっきまで深夜喫茶にseiryuと居た。帰り道の数十分で夜が終わった様子だ。小雨もある。少し寒いので毛布を掛けて眠ることにした。すると猫が腹の上に乗ってこちらを見てくる。目を合わそうとすれば逸らされるんだ。

仕事が終わってSOOZOO Gt.jasmine、Vo.seiryuと合流し、三人で桂の風呂屋へ行った。(紅一点のDr.桃歌は別用で来れないとのこと)風呂屋は京都では珍しいちゃんとした温泉だという。うん、確かに湯は少し塩っぱくて肌がぬるぬるする。湯の温度も丁度いい。東京の風呂は熱過ぎやしないか。ここは京都らしいというか、その適温にアホみたいな顔をして浸かっていた。俺たちは色々なことを喋った。が、やはり長風呂が苦手な俺がそろそろ出よう、と切り出す。帰り際階段で、自分はバンドをやっていて今度ピアノガールと一緒にやるから宜しく、と男に話しかけられた。俺は知らない男だったが、こんな所で出会うのは妙に面白い感じがした。うん、宜しく。楽しみなことが増えたって訳。それから飯を食ってjasmineを家まで送り届け、俺とseiryuは深夜喫茶へ。

一杯目は常温で出してくれと店員にお願いする。多分、淹れたてを冷ましてくれていたんだと思う、コーヒーが来るまで随分長くを待った。常温で飲むと本来の味が分かりやすい気がするんだ。俺たちは色々なことを喋った。面白かったのは''意識''の話だった。俺は店内を背に壁の方を向いた席に座り、seiryuは反対に壁を背に店内を見渡せる席だった。かれこれ4時間ほど店にいたが、俺は他の客の会話や人の気配にやたら意識が飛び、それを会話のネタにしたりした。彼は俺に言った。客の会話なんか全く気にしてなかった、と。(二杯目は熱いやつを頼んだ。やはり熱いコーヒーの方が美味かったね)そこで俺たちが思うに、壁を前にした閉鎖的な視界(この場合は俺の席)では無意識のうちに聴覚が研ぎ澄まされ、不可視の背後世界を想像したり気配に敏感になるのではないか。そしてseiryuの席のように店内を見渡せる開放的な視界では、目に飛び込んでくる情報が多過ぎて、逆に自己の内なるものへと意識が行く。現にseiryuと俺ではお互いが切り出す会話の内容に違いがあったように思う。簡単に言えば俺は他人の話、彼は自分の話。これは俺たちにとって面白かった。深夜喫茶は馴染みのない街にひっそり建っていた。薄暗い厨房と広い店内。もう客は俺たちだけだった。俺たちと隅っこのアップライトだけ。くすんだ茶色をしたそれを弾かせてもらえないか、と店員に言おうとした瞬間他の客が入店する。俺は黙ってコーヒーを飲み続けることにした。