low days

Kyoto Japan No Fun / PIANOGIRL vo. diary

韓国ツアー記録 1日目 仁川

三日間の記録をぼちぼち書き始めようと、今は18日の午前中でコーヒーを一杯淹れたところ。帰国して三日ほど経つ。昨日一昨日と仕事で、さっき皿を洗って米を炊いた。
取り戻してきた感覚があるので書き進める。

10月13日 早朝4時 起床。身体がおかしい気がする。熱を測ると38.4。あークソと俺は言う。前の晩仕事中から喉が痛み始めて嫌な予感はしてたんだが、本当に熱が出るとは。
たぶん疲れや寝不足から来た熱。空港のゲートを通り抜けれるか不安だったがとりあえず準備だ。今日から三日間、No Funは韓国ツアーに出る。tedに解熱剤を大量に貰いサブバッグに入れた。まだ真っ暗な表通りでタクシーに乗り込みGROWLYへ。

前の晩から楽屋で寝てたのはラモ、コワダ、カイシュウの三人。部屋にはラモのサンプラーが繋がれて小さな音でテクノが流れてる。三階に上がって他の皆と煙草を吸う。5:00 GROWLYを出てJR二条駅へ。京都駅から高速バスに乗って関西国際空港。1~2時間を飛べば仁川(インチョン)に着く。

今回アテンドしてくれたのは韓国VICTIM RECORDS。そこと昔から仲良くしてるSTONELEEKとのスプリットツアーだ。彼らは一日早く前乗りしてるという。No Funからは桃歌は参加出来ず、清水も初日のみの参加。カメラでカイシュウ。tedも帯同する。

空港に着いて皆は楽しく飲み始めた様子。俺は病人らしくしてる。預け荷物の行列でとある日本人観光客の女二人組とひと悶着があった。NJのギターが倒れかかり腰に当たったとかで彼女たちは酷く怒ってる。こちらは丁重に非を詫びたはずなのにいい加減しつこい女達だった。広い窓から白い光。俺はベンチで横になってみたが何ともならん感じ。

その後無事離陸。国際線は国内線より乗客を放っといてくれる感じが良い。うとうとするうちに13時過ぎ。仁川空港に着陸した。検温ゲートに強面の韓国人空港職員。俺は逆算して解熱剤を飲んでた。問題なく通過。

外に出ると前入りしてた清水と合流。そのすぐ横でVICTIM代表キスン氏とその仲間が二人、出迎えてくれた。10人の音楽旅団、その荷物量を見てVICTIMの三人は何か韓国語で相談してる。たぶん想像より多かったんだと思う。うーん。まぁとりあず煙草を吸おうのジェスチャー。俺たちも皆喫煙所に向かった。困ったときにまず煙草。信頼出来る証拠だった。

初日のハコは仁川city中心部にあるビルの四階club knock。豪華なバーカウンターと派手なステージが目を引く大きなお店だった。リハをして欲しいとのことなので少しチェックする。PAは大柄の中年パク氏。ハコ物のマイクは全てワイヤレスマイクだった。たぶんバンドというよりシンガーやアイドルが多いハコなんだと思う。奥には屋上庭園があって喫煙と楽屋。辺りは高層ビルに囲まれて薄黄色にガスった空に包まれていた。荷物を置き物販を整理したら街へ出た。飯を食ってコンビニで買い物をする。皆思い思いに購入した飲み物や煙草がどんな味がするなどと言って盛り上がる。

19:30にイベントが始まり出番最後のNo Funが終わったのが24:00。フライトからの長丁場で流石に疲れていたがやるべきをやった感覚があった。店のバーカンをやる女性がいて、名前は失念してしまったが、彼女はイベント中ずっと忙しそうに走り回りながらも両手を挙げてバンドの演奏を楽しんだり笑顔と元気を絶やさない人だった。俺は彼女から、説明が理解出来なかったが3枚のCDを貰った。キスン氏のバンドSink to Riseのライヴは大盛り上がりだった。若いカップルも年配の家族も皆一緒になって楽しんでた.。

club knockは後方に椅子と机が並び、ステージ前の広い空間はがらんとしていて飯を食いながらバンドを見てテンションがあがったら前のスペースに出てきて踊る。そういう流れが自然と出来上がっていた。夜が深まるにつれ、フロアに疲れが見え始めるにつれ、形容し難い世界の片隅みたいなパーティーだ。 

打ち上げはそのまま屋上庭園で行われた。SWEET GASOLINEというパンクバンドのベーシストと話した。若い男で、高知のバンドのTシャツを着てた。あなたのバンド、良かった。胸に来る熱いものがあった。俺は彼にそう伝えた。彼は驚いた表情のあと、物憂げな表情でこう言う。
I don't think so...
良い曲が作れない。良い演奏が出来てると思えない。
彼はそう続けて、俺はそれ以上何も言わなかった。

2時を過ぎる頃、コワダとtedと街へ出てみた。軽く食える飯屋を探したがどこも閉店していたのでコンビニでカップ麺を食った。俺は不調の喉に配慮し酒は飲まずにペプシだ。酒に酔った男女のグループが大きな声で揉めてる。俺たちは駅前の歩行者天国を散歩した。知らない街で言葉も分からず、看板も読めない。

3時過ぎに打ち上げは終わり。バーカンの女性はいまだに笑顔でテキパキ働いてる。清水は翌日日本でライヴだったので今夜でお別れだった。ホテルまで15分だから歩こう。VICTIMのカメラマン、ゴ君がそう言う。ゴ君はとても気の良い奴で、鮮やかな金髪をオールバックで纏め上げたインパクトのある見た目。俺たちも他の共演者たちとその日の別れを惜しみながらゾロゾロ歩き始める。15分ほど歩いて大通りに出た頃、ゴ君が言う。あと15分で着くよ!
そうして地下通路に入っていき、団体も散り散りになっていく。ようやく着いたホテルは韓国映画で見るような寂しげな坂に静かに佇む古い建物。ベッドが一つしか無いので俺はtedと同部屋で、ほかの皆は誰と一緒の部屋になるかでひと悶着。NJと海、長友と小椋、コワダとカイシュウ、ラモとアマネ。必然的な組み合わせだったがラモとアマネの部屋に関しては監視カメラで見てみていたいくらい異様だと思う。

チェックイン後にキスン氏とヨンヒ君(彼もVICTIMクルーで、痩せて背の高いライダースの良く似合う男)がニヤニヤした顔で両手にデカいビール瓶を持って言う。310号室は飲み部屋にするからまだ飲みたい奴は来いよ。俺は思わず言葉が通じてないフリをしたと思う。VICTIMクルーの体力と飲む量は狂人的だ。

部屋に入って今日一滴もアルコールを飲んでないことに気付き、310号室に少しだけお邪魔しようかと思ったがシャワーをしたら一歩も動けなくなった。もう外は少し明るい。天気予報では雨。時計は4時を過ぎてた。京都の家で起きてからちょうど24時間が経った。体調は悪くなく、回復に向かってると思う。そうそう、携帯のタッチパネルが反応しなくなった。誤作動ばかりで文字もろくに打てない。こういう時、いつも眠る前に旅の記録を携帯に打ち込むんだが今回は出来そうにない。目をつむるともう雨の音が聞こえてた。1日目の記録はここまで。また書きに来る。

写真はclub knockの屋上庭園。大陸からの黄砂で空は真っ青ではなかった。