low days

Kyoto Japan No Fun / PIANOGIRL vo. diary

湖岸(10月8日に書いたものを放置していた。公開する。)

何の気ナシに暮らしていたが、もう10月だとさ!来月の友人の結婚式への招待状を今朝返送した。昔からツアーでは決して外せない街で行われる式。ライブじゃなくあの街に降り立つと不思議な気持ちがするだろうな。さて、京都の我がボロ家はどうだ。玄関棚には交通関連の違反金催促状と、他にも様々な支払いの用紙が海底の岩陰に潜みこちらの様子を伺うようにある。最近は日々をしっかりと踏みしめる感覚が俺にはあり、今見えていることにも、これから先のことにも、それほど不安を感じていない。金は稼がなくちゃならんが、まぁどうにかなると思う。10日前に折った肋骨は思っていたよりかなりの早さで回復している。まだ重いものは持てないし姿勢によっては痛むが、動き回れるし普通に喋れるようにもなった。もう少し回復すれば、唄えるかな。13日の高槻でのライブは弾き語りでやることにした。デカイ音を出したいが、それで頭が馬鹿になって身体に無茶をするとそれこそまた何週間も完治が遅れると思う。それは避けたい。ライブがある。常にライブが控えているという生活はもう10年になるね。その間何があって俺はどんなだった?そのほとんどを俺は覚えていないような気がする。心労する程の現実は無いが、休息も無い。そんな生活が今のところ、俺の人生だ。昨日夕方から思い立ち、tedと琵琶湖の湖岸へ行った。ミニボンベでコーヒーを沸かしドライフルーツを食った。波風は強く、その波打ち際ぎりぎりの所に座っていた。対岸は微かに見える。空は圧倒されるほどデカい。気分は良かったのに何故か心苦しくもなる、湖岸は不思議な夕方だった。

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その時の写真を載せておく。

 

無題

10月2日 11時を少し過ぎた頃。気持ちの良い風が吹き、カーテンの隙間から真っ白な空が見える。猫二匹が今日も彼らにしか分からないルールで暴れ始める。俺は、移ろう秋の空を布団の上から眺めていた。16時、仕事から帰ったtedと外出。車を玉屋ビルに停めて上賀茂神社へ向かう。(写真は神社側から見た玉屋ビル)f:id:pianogirl292:20181002220405j:imageシンとした境内、白い砂の道を歩くと石と石が擦れて軽やかな音を聞ける。そうして本堂の方へ。社務所で用事を済ませて、ふと想った。青春時代を過ごしたこの町を想った。自転車を盗まれて、逆に盗んでやった駐輪場。大して美味くもないのに美味い気がしていた定食屋。事あるごとに飛び込んだ浅い賀茂川。用も無いのにただ座って煙草を吸いまくったベンチ。まだツケが残る焼き鳥屋。凍える寒さの大晦日に鼻水垂らしながら食った大根炊き。屋上からは京都タワーが見えるんだぜ。それはロウソクのように、静かに佇む暖かな灯りさ。思えばその灯りの下で俺たちは遊んでいたんだね。それは夢想的な季節。数年もすれば忘れてしまうように儚く、不確かな季節。今は踏みしめる町。毎日の一歩に明日が繋がっている。それは否応無く。だが俺はこれを求めてたのかもしれない。夢想じゃない、ヒリヒリとした現実。その中じゃないとどうも俺は引き締まらない。気が休まると命が縮まるんだ。この感覚は、誰もが持ちながら誰もが避けてしまう感覚。

すっかり日が暮れて俺たちは近所の飲み屋へ行く。もう上着がいるくらい寒かった。日本酒をやり始めた頃にNJが来る。見舞いに巻き煙草を買って来てくれた。バンドのことなど、あれこれを話す。決して後ろ向きな発言をしない彼と話すと俺も勇気が出る。能天気な俺、気分屋の俺、臆病者の俺、全部の俺に付き合ってくれるかい?2つの銘柄を一合ずつ、どちらも京都の酒を飲む。骨折してるせいか骨に染みて美味いような気がする。店を出ると神楽坂を登って家を目指した。飲み屋が数軒連なる通りで少し飲んで、帰り道に登る神楽坂(そういう名称の坂)が俺は好きだった。途中斜めに民家が建ち並び、背伸びするようにして見ると屋根の向こうに西の街が見えるんだ。俺は酔っ払っていて、そこで尻を出して写真を撮ったりする。すると更に気分が良いんだ。

無題

静かに屋根を打つ雨は今夜の俺に何か話しかけてくるようだった。明日は大型の台風が直撃するらしい。9月29日の夜だ。飼い猫の大きな方がメスのGingerで、チビがオスのOlive。Gingerは滅多に甘えてこないのに、この日はずっと鳴き声をあげてはすり寄ってきた。もしかしてまた発情期か?今はとにかく二匹で騒がしくやってる。それを見る俺は布団で一歩も動けない。28日の渋谷のライブで肋骨が一本折れた。あー糞みたいに痛い。渋谷を出たのは深夜2時頃だったか。俺は打ち上げで焼酎の水割りを一杯だけ飲んだ。機材車の一番後ろの席に横になる。車が揺れる度、肋骨に激しい痛みが走る。地獄のハイウェイとはこのことだった。京都に着いたのは8時頃。小雨降る灰色の朝。どうってことない朝だろうが、俺たちからすれば旅の終わりの朝。そのまま俺はシャワーを浴びて病院へ向かった。8番目の肋骨が折れてるね。レントゲン写真を見ながら医者が言う。まるで深刻さの無いモノ言いに俺も力が抜けてくる。そうですか。安静に?ツアーはどうなる?中年の看護婦と目が合うが、すぐに逸らされる。あーだこーだ言っても結局は時が経ち骨がくっつくのを待つしかなかった。病院の窓という窓を控え目に雨粒が打ち、俺は午前中の何とも言えない気怠さの中に居た。天気も糞だが、少し思い返す。渋谷で俺は久しぶりに涙が溢れてきた。それは突然少年のライブだった。他人のライブで泣くなんつーことはもう何年も無かった。別に特別な感情を持つバンドでも無かったしね。でも俺は胸を熱く焦がされた。心がぼうっと燃えてくるのを感じた。まぁそれだけ。punkは表現出来る奴と出来ない奴に分かれる。偽物はすぐにバレる。まぁいいんだ。偽物でもいいのさ。もう取り立てて騒ぐようなことは何も無い。俺には続けてきたこのバンドとプライドと我が家がある。そしてそれを人生単位で表現していくことだけに興味がある。

30日 23時。雨風は少し強いが、被害が出るほどでは無い。骨折のせいでほとんど寝たきりだ。身体が痛い。今はリビングに降りてきてtedと話している。机の上には友達に送る小包、支払いの催促状なんかが散らばってる。猫二匹は俺たちの周りをウロウロして、相手をして欲しそうな顔でこちらを見ている。tedがキャラメルを食いながらコーヒークリーム粉を湯で溶いて飲み始めた。そんなもの美味い訳がないのにウマイウマイと言って飲む。変わったヒトだと俺は思う。

10月1日 あと20分ほどで日付が変わる。さっき一本の電話があった。ある一人の仲間からだ。自らの道を決めたという内容のもの。別離さ。覚悟はしていたがこんなにも沈むような思いが襲ってくるとはね。晴れやかな門出に爽やかなサヨナラを、俺はいつもそう思ってやって来たはずだったが。身近な奴になるとまるでダメだった。落ち着けよ俺。旅立ちにはエールを。夕方近所のスーパーまで買い物に行ってみた。ずっと横になっているので身体が軋むように痛い。骨も痛むが、少し散歩して身体を慣らしたかった。晩飯の食材を買って、暮れていく通りをtedと歩いた。この通りはこの時間、様々な人の帰り道だった。

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写真は東京へ発つ時に撮った一枚。見ての通り俺たちの機材車はトランクが開かないので通路にアンプを置いて移動している。

無題

どうやら雨はやんだらしい。表通りは今夜、花瓶のように静かだ。日付が変わり22日深夜2時、書き始める。

仕事のあとスタジオのロビーに来た。ギターの弦を交換しチューニングを正したら、適当に鳴らしてみる。ピックは無かった。明日ライブで演奏予定の曲を順番に弾いてみた。どの曲も適当な所で弾くのはやめる。歌い出しに何を感じるかが大切だった。俺自身の唄。お前に等身大なはずがない。俺は確かめてみたかった。心の向かうままに音楽が鳴るかを。それが表現だと、最近は思うから。

帰宅すると飯を食って缶ビールを一本だけ飲んだ。それからライブでいつも履くジーパンを出してきて裁縫を始める。一度ライブをしたら一本の縫い目だけで繋がるボロ布になってしまうそいつを、その度に縫って直すんだ。これも俺にとっては何かを確かめる作業だと言える。何かって何だ?知るかよ。でも、蓋を開けて中身を確認するような、そんな安心をこのボロ布は俺にくれる。カビとインクと糸くずだらけのコイツを履いて明日も俺は唄う。

隣の部屋に客人が来ているようだ。俺はもう眠ろうと思う。一応喉を冷やぬようタオルを巻いて寝る。猫たちはおそらく客人にいい子ぶりっ子して見せる頃だろう。

無題

さっき日付が変わって今は9月19日。読んでいた本を閉じ、布団に横になって書いてる。さっきまでOliveは隣で寝てたが、何処へ行ったんだろう。そう書く間に階段の方から物音がする。二匹分の足音だ。最近二匹は仲良くやってるみたいだが、理由は寒くなってきたからかな。暑いとどうしても苛つく。特にこの家は暑い。いま二匹は追いかけっこを始めた。夜中のドタバタは愉快で良い。もっと派手にやれよ。ちょうどさっき眠り始めたtedを起こさないようにだけ気を付けるんだよ。本は三島の短編を読んでいた。昔からこの手の短編を好きでよく読んだ。この前東京の友人が俺にシャツをプレゼントしてくれた時、俺は三島の本を一冊(たしかこれも「真夏の死」という自選短編集だったと思う)お礼にあげた。短編の良いところは、冒頭と結末をものの数分で味わえるところだ。冒頭には大抵こちらの想像力が求められる。それがまだ不完全な状態で物語が結末を迎える。その時の妙な後味は癖になる。(また二匹が部屋にやってきた。ものすごいスピードで追いかけあったと思えば、両者静止して数秒、緊張感のある静寂)さて、このまま眠るかもう少し夜を過ごすか、考えてる。どっちでもいいんだ。何をしようと、何処へいこうと。

9月20日 午前10時。雨雫の音が聞こえてきそうな表通りはぼうっと白ずんでる。隣の豆腐屋が出荷作業を終えて後片付けをする物音。雨の合間に飛び、鳴く鳥。昨夜はnanoでライブだった。打ち上げが終わりファイターの車に乗り込む。この辺りはあまり記憶が無い。たしか玉屋ビルまで行ってseiryuを拾って天龍を目指したっけ。美味かったという記憶はある。それから俺の家に寄ってチーコを交え1時間ほど皆でゆっくりした。俺はソファ椅子に横になり天井を見つめながら煙草を吸っていた。会話を聞くのが好きだ。思わず笑ってしまうことや、「ほう。俺はどうだろうな。」と自身に移し替えて考えてもみる。考えた結果何も話さないことが俺には多いが、大抵考えるだけ考えてすぐ忘れてしまうね。

まだ身体に疲れを感じるが、起き出すことにする。今日の仕事は16時から。それまで豪とファイターと作業をする。刷り部屋の整理と特典音源の焼き増し。レコ発は明後日に迫った。今までの俺なら、必ず成功してみせる、と意固地になるほどだったが、もう余計な力は抜く。どうせライブになれば余計な力が入る。今はリラックスの時。プレッシャーは当然ある。今は穏やかにいたい。そうして結果、良い一日になることを俺は目指している。あんたの為じゃない。結果そうなれば喜ばしいが。何の為にやってるかなんて、とっくに忘れた。

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immanence

 

とある知り合いの絵描きは自らの作品にこう名付けた。

「immanence」

-あるものが、そのものの中におのずから存在していること-

巨大なキャンバスが一面かすれた黒で覆われた絵。その絵を俺は妙に思い出すことがある。決して塗り潰されていない、霞んだ黒。周囲と断絶していないという印象を持てる。

9月16日 仕事から帰ったのは23時半。お好み焼きを食う。それから新しいTシャツのデザインを考えてみる。一枚の白い紙を前にして(俺はパソコンを持たない)少しの間考える。よし、コラージュをやってみようと思い立った。家中の雑誌を集めてみるが、そんなに量が無い。なんでだ?二階の本部屋に行ってもみるんだが。シャワーを浴びたのに汗ばんでくる。(この日は蒸し暑かった)思い出した。ひと月ほど前に大掃除をして全部捨ててしまったんだった!

9月17日 昼前。昨夜の残ったお好み焼きを食う。22時まで仕事で、それからバンドのスタジオだった。練習前、豪とファイターはシルクスクリーンの木枠作りをやってた。俺が採寸したサイズに少し間違いがあったのでノコギリで切断して修正。俺はその間一人で飯を食いに行く。ビルに戻る途中薬局の前でNJと合流した。癖のある天然パーマに矯正をかけたらしく、サラサラの髪の毛になっていた。スタジオに戻る。さぁ一服したら練習しようか。

スタジオの後は最近取り組んでいる特典音源のミックス作業を。9/22の青天井発売イベントに向けて気持ちを作っている。セルフで録音する時、エンジニアはGt.のNJがやる。俺の細かい注文にもとことん付き合ってくれる。最低限のセンスってもんがある。特に俺たちのようにモノづくりを好きでやる者達には必要な感性。相手が音ならこっちは耳だ。それがエンジニアと共通することが大切。何でもそうだね、人と何かを作り出す時、共通の感覚(最低限のセンス)を持ち寄り、試みを恐れずに迅速な判断で進んでいく。不満ばかり言う奴はこの船に要らない。想像で堕ちる奴も辞めといた方がいい。作るは壊すと同質。俺の中にある旧態を破壊だ!そうじゃなきゃ、なんにも面白くないだろ。その爆発が俺の中に起こらない時、曲作りなんてやってたまるか。退屈はそのまま退屈として俺は持つよ。時間はたっぷりある。でも明日死ぬかもな。そうなれば最期の言葉はこの日記が、''らしくて''良い。

やってみようや。

いいね、やってみよう。

この会話が大切。分かるか?分かる奴は創造的な奴で、俺が好きなタイプの人間。

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外はとても寒かった。5時半に帰宅して、ふとギターを弾いてみる。自分の中にある言葉を独り言のように歌ってみる。カーテンの隙間、外はもう明るかった。どうしてか俺は決まりが悪くなって、眠ることにした。写真は帰り道に撮ったやつ。闇夜と前進を感じる。断絶と内在も、俺は感じ取れる。

 

 

無題

9月12日 9時に起床。猫2匹があちらとこちらで眠っている。寒くないか?俺たちは季節の変わり目に居るね。一階へ降り洗濯を済ませて畳に横になる。昨日買った本を開いてみる。放浪する男が孤独な旅の芸術家として死ぬ話。なんとなく冒頭の季節は9月の今日みたいな日なんじゃないかと思う。日々は過ぎ、気付く時にはもう厳しい寒さの冬だろう。来月からバンドはツアーに出る。心を熱くしよう。どんな成功より報酬より、胸にこみ上げる炎だけが俺たちを導いてくれる。その純粋な炎が照らす横顔に涙が伝ってる。横顔を思い出せない。誰だっけ、お前は。その震える肩を見て俺は思い出そうとする。権力者や心無き者に踏みつけられた人々。人は弱いとされると反抗の気力を失う。立ち上がる者はお前独りだぞ、と全員が言われてる。本来弱くは無いのに。独りじゃないのに。なんだろうねこの文章は。俺も書いていて訳が分からなくなる。んん、俺にはまだ溢れ返るほど反抗の気力があるってこと。反抗心。仮に間違えても、踏み誤っても、悔やむ事が無いほどの明確な怒りが俺にはある。

14日 13時になろうとする頃。缶コーヒーを飲みながら書き進める。雨ばっかりで嫌になるね。今夜はNJと録音の続きをやる。互いの仕事が終わって23時から始めて、何時までやるかは気力次第。良いものが録れれば無尽蔵に続けられる。閉じ込めたい音が沢山ある。音楽だけじゃない、街の音、会話、動物の鳴き声。ボイスレコーダーで録り貯めているそれらを音楽と溶け込ませたら。

15日 15時を過ぎ、まだ街には水たまりと忘れ傘と土曜日を急く人々。俺が帰宅したのは朝6時頃だったと思う。GROWLYビル3Fで録音は続いた。外が明るくなるにつれ俺たちの頭もおかしくなってきて、最終的にはいつもの悪ふざけが始まる。ひたすらファイターの屁の音を録音した。ある意味彼はプレッシャーとの闘いだっただろうし、俺も一体何をディレクションしてんのか分からなくなったが、散々笑って朝が来たって訳。12時30分に起床。tedの誘いで近所のカレー屋へ昼飯を食いに行く。地下道にある店なのに冷房を切っているので無風で暑い。現地で食ってるようだった。俺は途中から激辛に変更してもらう。暑さと辛さで汗が止まらない。その分、食い終わって地上に出ると爽やかな気分だった。そのまま俺は出勤。

これから始まるツアー、その旅先で俺は日記をよく書くと思う。空いた時間を見つけてはここに書き残していく。ライブが終わり打ち上げが終わり帰りの車内で。誰かの家で眠る時に。一人になれる時間。そっと俺の心と会話が出来る。一人にしてくれ。一人にしないでくれ。旅はそういうものだと、俺は思う。

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写真はSOOZOOで撮影をした13日のもの。宝ヶ池公園。この後俺たちはボートで漕ぎ出した。