low days

Kyoto Japan No Fun / PIANOGIRL vo. diary

無題

いつもライブで穿いているズボンを縫う。もう布が腐っていて自転車に跨ったりどこかに引っ掛けただけで裂けていく代物。特に強い思い入れは無いが、何年も穿き続けた事実だけがある。なんとなく落ち着くってやつ。人はそれをクラストパンツと呼ぶ。crustとは本来カサブタという意味の言葉らしく、ボロボロで汚い格好を好むスタイルとしてシーンに知られている。

俺はただ純粋に自分が作ったモノを身に付けていたいという気持ちがある。ひとつのモノを、それが壊れたり汚れたり破れたりするのは己の時代性を帯びているようで嬉しい。

ライブをするたびにケツが丸出しになるくらい裂けるんだが、それを次のライブの日の朝に縫う。納豆飯を食ってズボンを縫う。それが俺のライブの朝だ。

正午、散歩に出る。なんとなく東へ向かうことにした。昔住んでた町があって、あの坂の上の古い商店に行こう。店先に置いてある灰皿で煙草を吸いたい。

8月も終わりの頃だった。少しずつ夏の日差しは弱くなっている。最低な思い出がある居酒屋を通り過ぎ、いつぞや車を擦った縁石を越え、殺したネズミを葬った空き地に来た。ここはタヌキみたいなデカい猫が住む空き地だ。姿は見当たらなかったが、元気でやっていると良いなあ。

商店に着いた。相変わらず人気が全く無いので盗まれ放題な感じ。煙草を一本巻いて汗を拭いながら吸った。銀行員のような制服の女性がやって来て彼女も吸い始めた。たったこれだけ、全くどうでもいいような景色が依然としてこの町のらしさだった。家に帰るとまだ13時を少し過ぎた頃で、それから俺は何をしたかあまり覚えてない。